青森の人が沖縄三線弾いてみた…だけじゃない! 多彩なクリエイターいつなさん

青森の人が沖縄三線弾いてみた…だけじゃない! 多彩なクリエイターいつなさん

ほうがくのわ関連の活動をしていると、日々たくさんの方との出会いがあります。
興味深い、面白い活動をされている方もたくさん。

そんな中で、今回は三線奏者のいつなさんにスポットを当ててみたいと思います。
いつなさんは、ほうがくのわのイベントによく参加してくださっていて日頃から付き合いのある方ですが、改めて気になるアレコレをインタビューをしてみました。

三線を弾いている=沖縄出身??

いつなさん インタビューの様子

三線を演奏している、というと「沖縄のご出身ですか?」と聞きたくなってしまうものです。
いつなさんは、YesともNoとも捉えられる、面白い生い立ちを持っていました。

『そもそも、遺伝子は完全に青森なんです。』

いつなさんの家のルーツは沖縄…ではなく、なんと遠く離れた青森!?
家の中の文化も、帰省先も青森とのこと。ということは沖縄出身ではない…?

…話はまだ続きます。

『父親の仕事の都合で沖縄に移住して、その時に生まれたんです。』

なるほど、生まれは沖縄。
なので、「沖縄出身?」の問いには、文化や感覚的にはNoでありつつも、生まれたという事実的にはYesでもあるという。両極端な土地で面白い!

三線に出会ったきっかけ

沖縄で生まれ、そのまま沖縄の文化に触れ…
ではなく、5歳の時に、今度は東京へ引越しすることになったいつなさんは、東京で幼稚園、小学校時代を過ごします。

東京へ引越した後も、沖縄を忘れないように…と年に1回は家族で沖縄に旅行に行っていたそうです。
その時に、三線との出会いを果たします。

『沖縄の文化を体験する施設で、かんから三線(※1)を作るワークショップに参加しました。そこで自分で三線を作り、弾き方を教わりました。』

自分の三線を手にしたいつなさんは、三線が面白くて毎日家で触っていたらあっという間に弾けるようになり、それから一気に三線にのめり込んでいくことになります…。

ストレートに沖縄で生まれ、育ち、三線の音色が溢れた環境で……ではなく、一度沖縄を離れた後に、意外なところで沖縄の文化と繋がってくる面白い出会いですね。

※1 かんから三線…胴が空き缶でできた手作り三線のことです。

三線でボカロ曲!

三線のどんなところが楽しいかを聞いてみると…

『三線は、難しい曲が弾けた時に楽しい!と感じます。特にボカロ曲を演奏するときは、自分の好きな曲を弾いているという楽しさに加えて、速くて難しい曲が弾けている!という楽しさがあるので、さらに楽しく感じますね。』

小4の頃にボカロ曲にハマり、ちょうどそのタイミングで三線に出会ったとのこと。近所の和楽器教室で三線を習い始め、教室では琉球民謡などを学んでいたものの、家ではずっとボカロ曲を弾いていたそうです。
やっぱり自分の好きな曲を演奏するのはモチベーションが上がりますよね。

しかし、ボカロ曲の三線の楽譜はほぼありません。
そんな時は、手探りで耳コピをして弾いていたそうです。
繰り返しますが、いつなさんは当時小学生。本当にすごいモチベですね…

動画投稿を始めてみた!

ボカロ曲といえば、動画サイトで「演奏してみた」「歌ってみた」「踊ってみた」などの動画がたくさんアップされていますよね。
もちろんいつなさんも、数々の演奏動画をニコニコ動画やYouTubeにアップしています。

『他の人の演奏動画を見ていいな〜と思って、高校に入ってすぐ、動画投稿を始めました。』

その時にアップした動画はこちら!

「青森の人が沖縄三線で〜」タイトルからしてギャップが面白い。
「青森」と聞くと津軽三味線という楽器を連想してしまうので、なおさらです。他の動画にはない良いオリジナリティを出しています(笑)

一番最初にアップした「東京テディベア」は、投稿から5年が経った2023年に、同じ曲を弾き直したセルフリメイク動画をアップされています。ぜひ聴き比べてみてください!

演奏だけでなくイラストも自作

ところで、最近のいつなさんの動画にはよくイラストが入るようになりましたね?

『大学生になって最初の夏休みに、イラストレーターさんがアップしているイラスト講座の動画を見て独学で練習を始めました。100日間、毎日欠かさずイラストの練習を続けたんです。』

100日間毎日!!
並大抵の努力じゃないですね。
実際に、「ウマ娘」のキャラクターを描いたイラストを1日目から順に見せてもらいました。日々進化している………

『自分の動画を見て三線を始めた人がいて、もっと三線の魅力を伝えられればいいな、と思いました。その頃から、もっと動画を見てもらえるにはどうしたらいいか?を考え始めて、サムネイルを工夫しようと思いつきました。そこにイラストを使うと良いんじゃないか、と。』

その結果、インプレッション(※2)が上がったとのこと。しっかり効果が出てますね。
まさに「継続は力なり」!

※2 インプレッション…動画投稿サイトにおける、動画のサムネイルがユーザーに閲覧された数のことです。

「バグ」の三線演奏動画のサムネイル
「バグ」の三線演奏動画のサムネイル
「あんたにあっかんべ」「強風オールバック」の三線演奏動画のサムネイル
「あんたにあっかんべ」(左)「強風オールバック」(右)の三線演奏動画のサムネイル

動画だけにとどまらないクリエイティブ

こちらの画像に注目してみてください。

ミク三線

胴の部分に初音ミクのイラストが描かれていますが、いつなさん、この三線は…?

『ミクのイラストは、ネットで知り合った絵を描ける方に依頼して描いてもらって、それを沖縄の三線メーカーに送ってオリジナルのミク三線を作ってもらいました!』

なんと、世界に1つだけのオリジナル三線を企画して完成させてしまいました。
絃や駒も青色で統一されていてミクの雰囲気が出てますね。

さらに、もう1つ。これは…?

青い三線の爪

『三線を弾く時に使う爪です。アクリルブロックを買ってきて、糸のこを買ってきて手動で削って、ベルトサンダーを借りて磨き… 苦労しながら2ヶ月かかって仕上げました!』

こちらは完全手作りでした!
ボカロ曲などが弾きやすくなるよう、角度なども工夫されているそうです。

楽器自体にもオリジナリティを出して工夫するクリエイティブな姿勢。次はどんなところに目をつけていくのか、今から楽しみです。

現在と今後の活動

今やっている活動や、今後やってみたいと思っている活動について、聞いてみました。

『やっぱり主戦場はネット。動画投稿は定期的にやっていて、これからも続けたいと思っています。一人でも多くの人に、特に自分と同じくらいのボカロ曲が好きな世代の人たちに沖縄の音楽のことを知ってもらえたらな、という思いを持っているので、ボカロ曲を三線で弾くことに一番力を入れていきたいですね。』

『沖縄の民謡や古典を演奏する人はたくさんいます。でもそれだけだと元々沖縄の音楽に興味がある人にしか、三線の魅力は届きません。ボカロ曲や流行りの曲を三線で弾くことで、それ以外の人たちにも魅力を届けたいと思っています。』

三線で弾いてみた新作動画は次々と公開されています。
記事公開時点の最新作は、先日アップしたばかりの「ラビットホールを三線で弾いてみた」です!

『三線を知らない人向けにできることは、動画に限らず、人前で演奏する機会などもあればやってみたい。例えばミク三線を持っていって、「これなに!?」と興味を持ってもらうきっかけになれば…。』

筆者といつなさんとは、今年は一緒にコンサートに出演したり、大合奏の企画に参加したりしました。またいろいろなところで、日本の楽器のおもしろさ・楽しさを知ってもらえるような活動ができればと思っています!

『動画のコメントで救われたりすることもあるので、観てくれている人には本当に感謝です!これからも、三線の楽しさを知ってもらえるように、興味を持ってもらえるように頑張るので、よろしくお願いします!』

最後に… 楽譜の宣伝も忘れずに!

いつなさんの話をするにあたって、これを忘れてはいけません。

いつなさんの作成した三線の楽譜<工工四(※3)>を、「ほうがくのわ出版」で販売を開始しました!
記事公開時点では「フォニイ」「強風オールバック」の楽譜を購入することができます。
今後もラインアップを増やしていく予定なので、ぜひ三線でボカロ曲や人気曲の演奏を楽しんでみてください!

※3 工工四…「クンクンシー」と読み、三線の楽譜の伝統的な記譜法です。

「フォニイ」と「強風オールバック」の三線用楽譜

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