箏・津軽三味線ユニット「みつば」〜マイノリティの掛け合わせで独自の世界を作る!〜

箏・津軽三味線ユニット「みつば」〜マイノリティの掛け合わせで独自の世界を作る!〜

日々たくさんの出会いがある「ほうがくのわ」開催のイベント。

そんな中で出会った人たちを紹介していく企画、今度は箏・津軽三味線ユニット「みつば」のお二人を紹介します!

「みつば」は箏の「みのり」さん、津軽三味線の「ほなみ」さんの二人組のユニット。2023年に結成したばかりの新しいユニットです。みのりさんもほなみさんも、ほうがくのわのイベントに何度か参加してくれているのでよく知っているのですが、この機会に改めて、お二人に話を聞いてみたいと思います。

箏:みのりさん

箏:みのりさん

みのりさんはいつから箏を演奏してるんでしたっけ?

『箏との出会いは14歳(中学3年生)の時でした。たまたま母親が買ってきた漫画雑誌『ジャンプスクエア』に箏の漫画、『この音とまれ!』が載っていて… 箏を紹介しているシーンを見てハマったんです。』

『この音とまれ!』(アミュー 著)は高校の箏曲部を舞台にした人気の漫画作品ですね。漫画から入る方ってやっぱり居るんですね!

『箏はたまたま祖母の家に置いてありました。ハマってすぐに、箏の教室を探して習い始めました。
箏が好きすぎて、高校受験のときは箏曲部のある高校を先生に探してもらって、そこを受験して入ったくらいです!』

箏ありきで受験する高校を決めるとは!熱量がすごい。

『箏曲部に入った時は、部員は3年生が1人いるだけでした。1年生がもう1人入って、最初は合計3人。それを3年生になった時には8人まで増やしたんですよ。校内の舞台発表では優秀賞をもらうまでになりました!』

最初は1人しかいない箏曲部…。そして仲間をどんどん増やしていくのは、まさに『この音とまれ!』みたいな展開ですね。

みのりさんは箏曲部の部長も務めました。その頃から十七絃も担当するようになり、箏曲部を盛り上げるべく大活躍の高校時代だったようです!
そういえば、筆者がみのりさんと出会ったのは、まさにみのりさんが高校生のときでしたね。みのりさんにここまでの熱量がなかったら、出会うこともなかったかもしれません…

『平日は部活、休日は家や教室でひたすら練習していて、365日ずっと箏に触っていましたね(笑)』

その後も、みのりさんの箏に対する熱量はどんどん上がっていきます。

『高校卒業後は、箏を続けるためのお金をしっかり稼ぎたいと思ってすぐに就職しました。今は公民館で箏の体験希望者に教えたりもしています。今年は助教(※弟子を取ることができるレベルの資格)も取る予定です!』

津軽三味線:ほなみさん

津軽三味線:ほなみさん

続いて、津軽三味線のほなみさんにも話を聞いてみます。

ほなみさんはどんなきっかけで始めたんでしょうか?

『実は、津軽三味線よりも先に、箏をやっていたんです。
ヴィジュアル系ロックバンド『Kagrra,』(カグラ)の『うたかた』という曲をきっかけで…』

「Kagrra,」は箏が入っている珍しい編成のバンドです。そのため「Kagrra,」の楽曲には和風テイストの曲も多いですね。
「うたかた」は筆者も昔よく聴きました。懐かしい…!!

『真さん(Kagrra,のギター&箏担当)が弾いているのを見て箏に興味を持ちました。
大学生のときに邦楽サークルがあったので、そこで初めて和楽器に触れて、箏を始めることにしました。』

では、なぜ箏から津軽三味線に転向を…?

『実習が忙しくなって、邦楽サークルは途中でやめたんです。でも、ちょうどその大学生の頃に『和楽器バンド』が登場して、蜷川べにさん(津軽三味線担当)がカッコよくて憧れていました。』

『精神的にしんどい時期があって、その状態をなんとか打開したいと思って、衝動的に津軽三味線を習い始めました。今もその教室に通って、津軽三味線を続けています。』

新しいことを始めることで、物事が好転することって多々あると思います。今もずっと続けられているのは、ほなみさんにとって津軽三味線が精神的な支えになっていたからなんでしょうね。

2人の出会い

みのりさんとほなみさんが出会ったのは、ほうがくのわが開催したイベント「和楽器FAN交流会 in京都」でした。

「和楽器FAN交流会」シリーズは全国の様々な場所で開催しており、和楽器が好きな人が集まり、自由な交流を楽しむイベント。毎回内容が異なり、楽器の練習や合奏を楽しむ会もあれば、飲み会や遊びだけ!という会もあります。

和楽器FAN交流会 in奈良
「和楽器FAN交流会 in奈良」の様子

『京都開催のときに初めて会って、その次の奈良開催も2人とも参加しました。その時、何か一緒にできたら良いよね、と連絡先を交換しました。』

この二人、実は意外なところでお互いに共通するところがあり…

それは、マイノリティな側面を持っているというところでした。

みのりさんはセクシャルマイノリティ(LGBTQ)。YouTube動画の企画で、自身の悩みなどについて公表していますが、普段から生きづらさを感じていました。

YouTube動画「○にたいと思っていた人の人生変えてみた【神回】」

そして、ほなみさんは発達障害。
「スターブロッサム」という発達障害の当事者の方が集まる団体の副代表を務めています。

『スターブロッサムでは、発達障害などのマイノリティを持っている人がいろいろなことに挑戦し、自己実現できる場としてメイド喫茶を運営しているんです。』

『スターブロッサムにはLGBTQのメンバーもいて理解もありますし、自身も発達障害で世間的にも偏見を受けやすく、生きづらさを感じていました。なので、みのりさんにはすごく親近感が湧いて… さらにお互い和楽器好きというところも!』

…ということで、ほなみさんがみのりさんに声をかけ、即意気投合。トントン拍子にユニット結成に向けて動き出しました。

「みつば」の由来

そうして結成したのが、箏・津軽三味線ユニット「みつば」です。
「みつば」という名前にはどんな由来があるんでしょうか?

『ほなみの「み」と、みのりの「み」。三味線の「三」と、箏の十三絃の「三」。

「四つ葉のクローバー」って、もともと三つ葉だったものが突然変異して生まれたものなんです。LGBTQと発達障害という、偏見を持たれやすいマイノリティな属性にいるけれど、和楽器を通して前向きに生きていく、そして幸せの四つ葉のクローバーみたいに成長していければいいな!音楽を通して皆さんに幸せにできたらいいな!という思いで名付けました。』

『表記は、優しさを出すために、あえてひらがなにしましたね〜』

「みつば」の活動

そんな「みつば」のお二人は演奏動画をアップされています!
サムネイルからも「みつば」ならではの世界観が感じられますね。曲はDAOKO×米津玄師の「打上花火」です。「みつば」の力作、ぜひ聴いてみてください!

動画の他にも、リアルでの演奏活動として、みのりさんの地元・奈良県のイベントに出演するなど、「みつば」として徐々に動き出しました。

そして、次のイベントは2024年3月2日(土)。
京都 祇園の京町家Bar「SIGHTS KYOTO」での演奏です。

「SIGHTS KYOTO」さんでは、毎月、占い処「銀月堂」さんとのコラボイベントが開催されています。
銀月堂のオーナー 植野 銀月氏は琵琶の演奏をされている方です。今回は、植野氏の琵琶と、ゲスト出演する「みつば」の箏・津軽三味線の演奏を楽しめる和楽器イベントとして開催されます!「みつば」では二人の二重奏のほか、それぞれ箏と津軽三味線のソロ曲も披露する予定です。

みつばのお二人に会える、そして演奏を直接聴けるチャンスです!

箏・津軽三味線ユニット「みつば」 SIGHTS KYOTO
会場「SIGHTS KYOTO」にて

さいごに

さいごに、お二人の今後やりたいことを語ってもらいました。

みのりさん:
『「ほうがくのわ合宿2023」に参加した時、関東圏の和楽器の愛好家がお互い顔見知りで、楽しそうで良いな〜と思ったんです。関西でも、「みつば」でオフ会などを企画して和楽器を楽しむ人と繋がりたい!
和楽器も、LGBTQも、発達障害も、全部マイノリティな世界。3つのマイノリティが交わり、お互いに横のつながりを作れるような場にできたらいいな。』

ほなみさん:
『社会福祉士の資格を持っているので、”社会福祉士メイド” として自身のブランディングをしていきたいですね。障害年金の勉強会をしたり、福祉系の制度をわかりやすく伝えたり…。さらに三味線も弾くよ!という意外なギャップを見せられたら面白いんじゃないかなと。
三味線はまだ2年目だけど、「みつば」の活動を通して上達していくのを見てください!』

「みつば」の活動は、みのりさんとほなみさんにしかできない唯一のものになっていくのではないかと思います。それぞれが持つ世界と和楽器との組み合わせで、どのような新しい場が生まれるのかとても楽しみです!

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