家で箏の練習! 〜消音方法を考える〜

家で箏の練習! 〜消音方法を考える〜

マンションやアパートで箏を練習したい、夜間に箏を練習したい…。でも、音が響いて近所の人や同居の家族に迷惑がかかってしまう…と心配してなかなか練習ができない方も多いと思います。
このページでは、箏の音をいかに小さくして練習するか?その方法について検討してみたいと思います。

ハードルが高い、部屋自体の防音

部屋の防音ができれば即解決!ですが、大掛かりな準備が必要で、金額も莫大になり難しい方が多いのが現実です。
…ですので、ここでは詳しく紹介しませんが、部屋の防音を考えるにあたって以下の2種類の音の伝わり方に触れておきます。

空気伝播音

音が空気中を伝わり届く音。音源からの距離が離れれば離れるほど減衰し、また、壁などの音を遮るものを隔てることで減衰します。

個体伝播音

個体のモノを通じて届く音。例えば、振動が建物の床や壁といった別のモノを伝って届く場合です。空気伝播音と比べて、距離が離れても減衰しにくい性質があります。

最近では、楽器用の簡易防音室や簡単に取り付けられる吸音壁、防音カーテンも販売されており、空気伝播を減らす手段が増えました。ただ、防音室は縦型のものが主流で、箏に使おうとするとサイズがネックになりますね。

個体伝播については、楽器の下にゴム製のマットを敷くなどして簡易的に防ぐ方法があります。 いずれは、箏に特化した「部屋の防音」も考えてみたいところですが、今回は楽器自体に着目したいと思います。

参考:部屋の防音アイテム

箏の音が鳴るしくみ

そもそも箏ってどのようなしくみで音が鳴るのか?を簡単にご説明します。

箏の絃に①爪を当てると、②絃が振動します。
その振動により空気中に音が広がるとともに③胴にも音が伝わっていきます。箏の胴の中は④空洞になっており、音が反射し共鳴することで増幅されて、⑤2箇所ある音穴(サウンドホール)から出て行くというわけです。
つまり、①〜⑤のいずれかの時点で何かしらの工夫をすれば音が小さくなります。

箏の図

① 爪を当てる

弱い力で爪を当てれば、音は小さくなります。

② 絃の振動

絃から出る音の振動を抑えることができれば、音は小さくなります。

③ 音を胴に伝える

胴に伝える手段をシャットアウトしてしまえば(胴と切り離してしまえば)、その先の増幅フェーズへ進めることができなくなります。

④ 箏の内部構造

内部の空洞を埋めてなくしてしまえば、共鳴は起こりません。

⑤ 音穴から音が出る

音穴をなくしてしまえば、音が出ていくところがなくなります。

①について、力を抜いて演奏したり、爪をはめずに演奏すれば音は小さくなりますが、それではあまり練習になりません。
また、③〜⑤について、楽器を改造したり、サイレントギター、サイレントバイオリンのように専用の「サイレント箏」を開発すれば解決できる話かもしれませんが、非常に大掛かりであり誰でも気軽に…となるとほど遠いでしょう。

そこで、このページでは②に絞って検討していきたいと思います。

絃の振動を抑える方法

皆さん様々な方法で絃の振動を抑える工夫をされていると聞きます。例えば、多くの方が実践されていると聞くのがタオルを被せるといったやり方など…。ここでは2つの方法を紹介します。

1:小夜ひめ

箏消音フェルト 小夜ひめ パッケージ

箏消音フェルト 小夜ひめ 箏の竜角沿いに装着したシーン

箏の音を低減させる便利なアイテムとして箏消音フェルト「小夜ひめ」(さよひめ)があります。これを絃と甲の間に入れ込み、竜角に合わせて装着することにより、フェルト面が絃に触れ、弾く音が小さくなります。
フェルトは吸音性が高い素材として優れており、吸音パネルなどにも使用されています。

パッケージには「お箏の音の響きを低減しますので夜間の練習などに御使用下さい」と書かれているように、まさにこのようなニーズにぴったりなアイテムと言えそうです。

小夜ひめのメリット

  • 何と言っても装着が簡単!
    楽器によって、また調絃(琴柱の位置)によって絃と甲の隙間が変わりますが、クサビ型のゴムも付属しており、それを差し込むことによって高さの調整をすることができます。

小夜ひめのデメリット

  • 爪を当てる箇所のすぐ右側に「通常の演奏時には無い物体がある」のは非常に気になってしまい、普段と異なる感覚になります。
  • 爪を当てる箇所と竜角の距離が短くなるため、絃の張りの感覚も通常とは異なり、こちらも気になってしまいました。
    (2点とも個人的な感想です)

2:オリジナル消音チップ

オリジナル消音チップ 箏用

オリジナル消音チップ 箏用 箏に装着したシーン

これは筆者が作成した、絃の振動を物理的に低減させるアイテムです。
琴柱から3cmくらいのところに引っ掛けておくと、音量がかなり下がります。
※琴柱にぴったり付けてもOKです。音量は上がりますが、音(ピッチ)はより正確になります。

様々な素材で比較した結果、軟質PVC、特許ポリ塩化ビニール製フォームで作られた、この「AMP コンフォートキング」に辿り着きました。

Amazonや東急ハンズで誰でも購入することができ、金額も安い!少し固めのスポンジのような柔らかさで、加工が簡単です。
シート状で売っており、それを約2.5cm角に切断し、切れ込みを入れるだけで完成です。(大きさを変更すれば十七絃にも対応させることが可能です)

消音チップのメリット

  • 付けていることを意識せず、通常の感覚のまま演奏できる
  • 音量がかなり小さくなる

消音チップのデメリット

  • 絃の数だけ(13個全て)取り付ける必要があるので、面倒
  • 調絃替えで琴柱を移動させると音程が狂う場合がある

音の比較

「通常」「小夜ひめ付き」「オリジナル消音チップ付き」で音を比較してみました。 動画で音量や音色の違いをご確認ください。

数値を測定してみたところ、以下のような結果となりました。
また、消音アイテムを使用した場合は、音量だけでなく爪が絃に当たった後の余韻も小さくなったため、数値以上に効果を実感できました。

  • 通常:81.5dB
  • 小夜ひめ付き:70.2dB
  • オリジナル消音チップ付き:63.2dB

※dB(デシベル)…音の強さを表す単位。数値が大きいほど、音量が大きい。
箏のすぐ前方にて測定。あくまで参考値であり、弾き方によって音量は大きく異なります。

さいごに

他にも、もっと良い消音方法はあるはず!
筆者も家で音が出せないため、箏の消音は重要な課題です。音響に関しては全くの素人ながら、これからも継続して様々な消音方法を試していこうと思います。
このページをご覧になった方で、良い方法をご存知の方はぜひ教えてください。また、一緒に消音アイテムを考えてくださる方大募集中です!

2020年5月公開

 

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